2010年の秋。トリノは既に冬のような寒さで、ちょうどローマ通りを歩いていました。そしてサン・カルロ広場に差し掛かったところで、前方から愛犬を連れた大きな人が歩いてきました。レオナルド・ボヌッチでした。

そのシーズンの夏にユヴェントスに加入し、選手としてはまだ無名に近いような存在でした。しかし彼は着実な成長を遂げていきました。

ユーヴェの最終ラインを担う重要な選手として、常にミステルたちのファーストチョイスであり続けました。

どんなシステムにも適応できる力。守備だけではなく、ビルドアップもできる。時節見せてきた前線への正確なフィードと攻め上がりを持ち合わせ、いつしかボヌッチは普通の選手ではなくなりました。

しかし2017年夏。別れは突然やってきました。ボヌッチはトリノを離れました。

正直なところ、とても驚きました。彼だけは移籍しないのではないかと。。しかし、選手としての寿命は短いことなどを考慮すると、自らを評価され、所属先に魅力的なプロジェクトや野心があれば移籍するのは寧ろ自然な流れと思うようになりました。

ミランへの移籍は彼の選手としてのステップアップとなるはず。ただ、ボヌッチの成長を厳しくも温かく見守ってきたJUVENTUS OFFICIAL FAN CLUB GIAPPONEの皆さんの反応が気になるところではあります……。

一方でユーヴェにとっては重要な選手に成長したボヌッチを失ったのは大きな痛手であるものの、このクラブに根付くクラブ以上の存在はないということを再び知らしめた格好です。

ボヌッチなどを失った一方で、多くの重要な選手たちとサインをしてきました。彼らがどのようなパフォーマンスを見せるのか、ボヌッチの穴は埋めることができるのか(ちょっと心配)。とても興味深いシーズンになりそうです。

そして、最近のカルチョメルカートを取り巻く環境が随分と変化してきた印象を受けました。以前は現在ほどメディアも発達していませんでしたし、SNSなどありませんでした。

現在は動きがあればSNSですぐに拡散され、事前に交渉の噂やリアルタイムでの動きがわかってきたのは大きな違いです。これが良いか悪いかは人それぞれかもしれません。

かつてユーヴェにはルチアーノ・モッジという敏腕ゼネラルマネージャーがいました。メディアを煙に巻いて攪乱させ、全くノーマークの状況を作り出して移籍をまとめていたのを思い出します。2004年夏、ズラタン・イブラヒモヴィッチとファビオ・カンナヴァーロが移籍期限最終日に2人同時に加入してきたのは、その最たるものでした。

驚きのないカルチョメルカートと驚きのあったカルチョメルカート。

もしモッジが現在のようにメディアやSNSが発達した世界で仕事をしていたら、どのように動くのか。あの時のようにファンを驚かせるような手腕を発揮できるのか。ボヌッチとの別れと共に、そんなことを考えた2017年夏のカルチョメルカートでした。

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