ゴールを決める15秒前。

その選手は自陣エリア内で相手コーナーキックのための守備をしていました。

ヘディングで強さを発揮するクリスティアーノ・ロナウドはボイチェク・スジェズニーの前で相手の攻撃に備えていたのです。しかし、彼が決めたこの試合の2点目のゴールは既にここからスタートしていたと言えます。

相手コーナーキックはショートし、ロナウドの前にいたエムレ・チャンがクリア。これをドウグラス・コスタが右サイドでキープして上がってきたエムレ・チャンに再び預けると、それに呼応してロナウドがまるで負荷をかけた練習中の全速力かと思わせるように一気に加速して上がっていきました。

そのアタッカーは自陣エリアからセンターサークルを超えて迷いなく一気に加速し、並走していたジョアン・カンセロを追い越すと、ロナウドの主戦場である中央から左に流れてパスを受けました。

ロナウドはこのパスを難なく処理し、左足でファーサイド隅に流し込みました。それはアッという間の出来事でした。

 

シーズンが開幕して3カ月。これまでのロナウドの最も印象的なゴールはどれになるでしょうか。個人的に、それはサッスオーロ戦で決めた2ゴール目でした。

このゴールで確認したい点がありました。それはシュートを打つ前にどうやってトラップしたのだろうかと……。

後日になって確認すると、パスの勢いを殺さないようにしながら右足アウトで優しく左足でシュートを打ちやすいような位置、相手キーパーの飛び出しとディフェンダーのスライディングを避けることができる位置に流していました。そして迷いなくコースを狙って打ったシュートはファーサイド隅に吸い込まれていきました。

トップスピードで走ってきたあとの何気ないトラップ。しかし、彼のトラップは何度でも繰り返し観たくなるほど完璧でした。

素人目ながら、あのトラップは決して容易でないように見えました。自身はトップスピードから急停止し、一方でボールの勢いを殺すことなく足元に近過ぎず遠過ぎずの位置に置かなければならない。あのトラップで少しでもミスをしていたら、おそらく相手の守備に阻まれていたように思います。

もしチャンスがあったら……あのトラップからのシュートイメージはどこで描いたのか、切り返して右足で打つという選択肢を考えた瞬間はあったのか、というところを聞いてみたいところです。

ボールのないところでの動きとシュートに持っていくまでの完璧なプレー。そして難しそうに見えるプレーを当たり前にやってのける技術の高さ。例えそれがロナウドの仕事だとしても、彼がその実力を改めて披露した素晴らしいゴールでした。

開幕から3カ月が経った今、ユヴェントスはカンピオナートとチャンピオンズリーグにおいて、らしくない安定ぶりを見せていると言っても良いでしょう。そして、この結果に大きく貢献している選手がいます。それは紛れもなくクリスティアーノ・ロナウドです。

シーズン開幕前、世界中のユヴェンティーニが驚いたであろうスーパースターの獲得。しかし、選手は周囲の期待通りの活躍をしているのではないでしょうか。

開幕当初こそ数字を残せなかったとはいえ、少しずつ結果を出し、今となっては真の姿を見せてくれています。試合を重ねるごとにフィットしてきているようにも見え、チームも勝ち続けるという例年にない結果を出しています。また、彼のプレーによってピッチ上でもチームにとってポジティブな数字が確認されています。

試合終了後には誰にも負けないくらいにユニフォームを泥だらけにしているロナウドの姿が印象的であり、今後の活躍と共にその存在がもたらすチームへの代え難い効果が楽しみなところです。

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